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arizona ハナシのダイジェスト

プロ・マニアによる
役立ち情報満載の知恵袋コーナー。

猫のお話

記憶の始まりってどこからなんだろう【中編】

次の日の朝、昨日の友達二人がやってきて

ヒロはその子たちと一緒に学校というところに行ったようだ。

ということは今日はママと二人だ。

 

昨日と同じ温かいミルクと、ちょっと柔らかくてクリーム状のいい匂いがするものが出てきた。

僕は昨夜と同じようにミルクを飲み、クリームごはんを食べた。

だけど、なんだかお腹が痛くなる。全部食べたいのに食べれなくて少し残してしまった。

ママ、残したので怒っちゃったのかな。

奥の部屋からガサゴソと何かを探し出して僕の目の前に持ってきた。

あの白い箱だ!

そして僕は、またあの白い箱に入れられて、今度は蓋まで閉められてママに連れ出された。

冗談じゃないよ!もう捨てないでよ!

また昨日の草むらに行くのは嫌だよ!

ママは箱に入れられた僕を連れて外に出たようだ。なにせ蓋が閉まってるので何にも見えない。

あ〜、最悪。またあの生活にもどるのかよ。

僕は絶望の淵に立たされた。

 

キーッ カチャッ。

扉が開く音が聞こえた。

昨日の草むらではないのは間違いなさそうだ。じゃあどこなんだろう。

しばらくして箱のフタが開いた。

上から眩しい光が入ってきた。

そこには白い服を着て、太いフチのメガネをかけたおじさんが優しそうな顔をしてこっちをのぞいていた。

隣にはママもいた。二人で何かを話してる。

体力のない僕は、触られたりいじられたりしてもなすがまま、抵抗すらできない。

一通り触られたあと、僕はそのおじさんに抱きかかえられ、

そのおじさんは、じっと僕の顔を食い入るように覗き込んできた。

優しそうに微笑むそのおじさんに、僕が気を取られてしまったその隙に

僕の背中に、チクっと何かが刺さる感触があった。

それは特に痛くはなく、

むしろ、ちょっと楽になっていくような感じさえあった。

僕は再び白い箱に戻された。

ママとさっきの太いフチのメガネをかけたおじさんの笑い声が聞こえる。

どうやら捨てられることはなさそうかな。

ちょっと胸をなでおろした僕だけど、ここからは早く出してほしいものだ。

なにしろ真っ暗で息苦しい。

そして再びママは歩き始め、数時間後、僕はどうやらママの家に帰ることができた。

箱から出されると、そこにはヒロもいた。

ヒロは友達だ。僕を救い出してくれた命の恩人だ。

ヒロは、僕の顔を見るたびに「ミー、ミー。」っと言う。

そういえばママもそうだ。

なんだよ、人の顔見りゃミーミーって、蝉じゃあるまいし。

 

その日も僕は、ママに温かいミルクをもらい

柔らかい布の上で寝ることができた。

ヒロはもう寝てるみたい。

ママは隣の部屋でお話中。楽しそうに誰かと電話してるようだ。

僕はヒロの寝息とママの話し声に包まれながら体を休めた。

やっぱりまだ疲れが残ってるんだなぁ。。

 

翌朝。今日もいつもの温かいミルクが出された。

ヒロは今日も学校というところに行ったらしく

ママも出かけて僕一人。

僕はもうこの家の家族ってことなのかな。

やっと僕にも〝我が家〟ってものができたのかな。

〝家族〟っていいな!

生きてるって実感を初めて感じることができたようだった。

 

今日もヒロは学校から帰ってきたら遊んでくれるし

ママは美味しいミルクを飲ませてくれる。

新しく肌触りのいいその布に包まれた僕は幸せだった。

やっと手に入れた安住の地・・・

そう思っていたこの日の夜。

うとうとしていた最中、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。

それは寝ていた僕も一発で飛び起きるほどの大きな音に聞こえた。

「誰だ!何時だと思ってんだよ!」

気持ちよく寝ていて起こされてしまった苛立ちと

客と思われるその男の声のデカさに僕はちょっと不機嫌になった。

後編に続く…。

書いた人